年間第17主日

御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働く(ローマ8・28より)

 

聖パウロ

モザイク

イタリア モンレアーレ大聖堂 12世紀

 

 今回の表紙絵は、第2朗読で読まれる使徒パウロのローマの教会への手紙にちなんで、パウロの肖像を伝えるモザイクが掲げられている。A年の主日のミサの聖書朗読配分では、年間第9主日から年間第24主日まで(今年の場合は、季節・主の祝祭日の関係で年間第11~17主日、第19~24主日に)ローマ書からの朗読が続いていく。その意味で、A年はローマ書を学ぶ一年にすることもできる。実際、福音朗読箇所と第1朗読の旧約朗読から浮かび上がる主題に、ローマ書の内容は、非常に深いところで結びついており、これらの聖書朗読とともに黙想し、祈るための貴重な導きとなってくれるものである。

 福音朗読箇所のマタイ13章44-52節(=長い朗読の場合)または44-46節(=短い朗読の場合)で語られる最初の譬え話で、天の国(神の国)の意味が、畑に隠されていた宝を見つけた人が自分の「持ち物をすっかり売り払って」(44節)その畑を全部買うという行為を通して語られている。次に語られる、良い真珠についての譬え話もやはり天の国(神の国)の意味を物語る。これらに対する読解の導きとして、第1朗読箇所である列王記上3章5、7-12節では、ソロモンが神に願ったのが訴えを正しく聞き分ける知恵であったというエピソードが示される。これらを通じて、神の知恵、神のことば(きょうの答唱詩編参照)、神の国こそが、人の求めるべきものであることが告げられている。これらは「何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい」(マタイ6・33)というイエスの直接の呼びかけを展開している譬え話であると、位置づけることができる。

 最初の「畑に隠されていた宝」(マタイ13・44)の話の宝が神の知恵の表象であるとするとき、さらにその意味を考えさせる箇所がローマ書16章25-26節にある。パウロが福音について述べているところである。「神は、わたしの福音すなわちイエス・キリストについての宣教によって、あなたがたを強めることがおできになります。この福音は、世々にわたって隠されていた、秘められた計画を啓示するものです。その計画は今や現されて、永遠の神の命令の間に、預言者たちの書き物を通して、信仰による従順に導くため、すべての異邦人に知られるようになりました」(ローマ16・25-26)というところである。ここの中の「世々にわたって隠されていた、秘められた計画」(25節)という語句のうちに「隠されていた宝」と響き合うものが感じられる。秘められていた神の救いの計画が、今やイエス・キリストによって実現された、それこそがまさに福音であり、これを受け入れた人(キリスト者)が、それを全力で全身全霊をもって告げ知らせるべきものである……そのような救いの実現と、キリスト者に対する派遣の意味合いまでもが、「畑に隠されていた宝」を見つけた人の行動のうちに表現されている。 

 しかもここを踏まえると、きょうの第2朗読箇所の冒頭のパウロのことばが関連してくることが感じられる。「神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働く」(ローマ8・28)というメッセージである。ここでも「御計画」というところに神のみ旨、神の計画が語られ、「召された」というところに、イエス・キリストによるその計画の実現を知り、受け入れているキリスト者のありようが一言で示されている。その人たちには、「万事が益となるように共に働く」とある部分は、この日の『聖書と典礼』4ページの脚注で「何が共に働くのかははっきりしない。『聖霊』(27節参照)とも『すべて』とも『神』ともとれる」とあるように解釈がさまざまに可能である、という。すなわち「神が」あるいは「聖霊が」と「召された者たち」とともに働くととるか、「すべて」(万事)が全体としてともに働くのか、両方の可能性がある。どちらかではなくどちらの可能性もあるとすれば、キリスト者にとっては神が、聖霊がともに働きつつ、すべてがともに働き合うものだ、という現実が示されていることになる。

 ここで「共に働く」と訳されていることばは、原文のギリシア語では「シュネルゲオー」(シュン[共に]+エネルゲオー[働く]」、文字通り「協働する」である。神の救いの計画の完成、終末における神の国の完成まで続くこの協働は、今、カトリック教会全体のテーマとなっているシノドス(ギリシア語「シュン[共の]+ホドス[道]から来る語」、シノダリティー(協働性)とも重なる考え方である。神自身による協働性は、地上の教会共同体の世界的な協働性の源であり、それら全体を包むものである。きょうの聖書朗読全体を通じて思いを深めていただけたら、と思う。

 

オリエンス宗教研究所 https://www.oriens.or.jp/st/st_hyoshi/2023/st230723.html